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第16章 真贋・コンディション・ケア

最後の実務章。ニセモノを見抜き、状態を正しく評価し、価値を保つ(あるいは回復する) 技術です。高額になるほどここの精度が利益と信用を左右します。

14-1. 真贋(しんがん)の基本姿勢

「タグだけで判断しない。タグ × 縫製 × 生地 × 金具 × ディテールの整合で判断する」

ニセモノは「どこか1点」を完璧にしても、全体の整合性までは再現しきれないことが多い。複数要素を突き合わせるのが鉄則です。

偽物・年代詐称のサイン

観点怪しいサイン
タグフォント/色/比率が公式年代パターンと違う、付け替え跡、スペルミス
縫製運針が雑・年代と不一致(古いはずがオーバーロック多用 等)
生地・素材風合いが年代と合わない、軽すぎ/化繊すぎ
金具ジッパー/ボタン刻印が年代と不一致(後年メーカー)
ディテール本来あるべき仕様(セルビッジ、隠しリベット等)が無い/逆に過剰
全体価格が相場より不自然に安い(即決を煽る)

真贋の手順

  1. 基準を知る:本物の年代別ディテールを頭に入れる(→第4〜11章)。
  2. 複数要素を確認:タグ→縫製→生地→金具→ディテール。
  3. 比較:信頼できる本物の画像・実物と照合。
  4. 違和感を言語化:「ここが年代と合わない」を具体的に。
  5. 不安なら見送る:高額品で確信が持てなければ買わない/専門業者に相談。

14-2. コンディション評価(再確認)

第12章のランクに加え、現物で必ず見る箇所:

  • 襟・袖口:スレ・ヨレ・黄ばみ(最も出やすい)。
  • 脇・股:黄ばみ・汗ジミ・穴。
  • 全体のシミ:油・血・墨・カビ。光に透かす。
  • 虫食い:ウール/ニットの小さな穴(複数なら要警戒)。
  • 加水分解:シェル裏地・コーティングのベタつき/剥離(→第3章)。
  • リペア/サイズ直し跡:裾上げ・詰め・当て布。
  • 色褪せムラ:日焼け・退色の偏り。

💡 デニムの色落ち・ミリタリーの退色など、ジャンルによっては「使用感=プラス」。状態評価は常に「そのジャンルの価値観」とセット。

14-3. クリーニング・洗濯の基本

価値を 下げないための洗い方。素材で全く違います(→第3章)。

素材基本注意
綿(一般)中性洗剤・水〜ぬるま湯高温・乾燥機で縮む。濃色は色移り注意
ヴィンテージデニム単独・裏返し・ぬるま湯・陰干し色落ちを生かすなら洗いすぎない。糊落ち注意
ウール/ニット手洗い or ドライ、平干し洗濯機・乾燥機でフェルト化(縮絨)。虫対策
レーヨン/シルク基本ドライ水で縮み・シミ。アロハ等は慎重に
化繊シェル弱水流・陰干し高温NG。コーティング劣化注意
プリント物裏返し・低温・陰干しプリント割れ・剥がれ防止
  • シミ抜き:古いシミ・黄ばみは家庭では落ちにくい。無理にこすると生地/プリントを傷める。部分的な酸素系漂白は色物・プリントで要注意。高額品は専門クリーニングへ。
  • カビ・匂い:陰干し・風通し。ひどい場合は専門業者。

14-4. 補修(リペア)という価値再生

  • チェーンステッチ裾上げ:デニムは専門ミシン(ユニオンスペシャル)でのチェーンステッチが価値を保つ。
  • ダーニング/かけはぎ:穴・虫食いの補修。味として見せる手法も。
  • 当て布・パッチ:ワーク・ミリタリーでは補修跡が「味(ボロ)」として評価されることも。
  • ジッパー交換:年代に合う金具を使うのが理想(不一致は価値を下げる)。
  • ジャンク品を仕入れてリペアで再生する=価値創出の仕入れ術(→第15章)。

14-5. 保管(長く価値を保つ)

  • 直射日光を避ける:退色・黄変の最大要因。
  • 湿気対策:カビ・加水分解の防止。除湿・風通し。
  • 防虫:ウール/ニットは防虫剤。密閉しすぎない。
  • ハンガー選び:重いコート/ニットは型崩れ防止に太いハンガー or 平置き。
  • デッドストック:付属品(下げ札・フラッシャー)を失わない。価値の一部。

14-6. 仕上げ:信用が最大の資産

販売するなら、状態を正直に開示することが長期の信用=リピート=高値販売につながります。

  • ダメージは隠さず写真と文章で明記。
  • 真贋に不安があるものを「本物」と断定しない。
  • 採寸(実寸)を正確に。

🔑 古着は「知識 × 誠実さ」の商売。見抜く力と正直さが、結局いちばんの利益になります。

🎯 理解度テスト

理解度テストこの章の知識が入ったかチェック(全3問)
  1. 真贋判断の鉄則は?

  2. ウールの洗濯で避けるべきは?

  3. デニムの裾上げで価値を保つ縫製は?


第15章 仕入れの実務 | → 次の章:第17章 用語集

学習用にまとめた教科書です。年代・ディテールには諸説あり・過渡期があります。| 写真:Unsplash